FC2ブログ

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://hal01.blog1.fc2.com/tb.php/137-719c3750

-件のトラックバック

-件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

死の棘

正月が明けた頃からずっと、島尾敏雄の『死の棘』を読んでいて、
昨日やっと読了した。

夫の不貞のために精神に異常をきたした妻が、夜となく昼となく
夫を責め続け、浮気の相手のことや行動の内容を細大漏らさず
明らかにしろと同じ尋問を飽くことなくいつまでも繰り返す。
拷問とも思えるほどの執拗な追及を逃れようと、夫は自分も
心の均衡を崩した振りをして妻の発作に対抗し、それを見た
4歳の娘は友達を連れてきて、ホラネアタシノオトウサン
キチガイデショと指をさして笑う。

こんなふうなことが文庫にして約600ページに亘って続く、地獄絵図の
ような小説だ。しかもほぼ実話というから恐ろしさもひとしおである。
一家は住まいを移したり、治療のために病院を頼ったりもするが
妻の症状は治まることなく、出口のない不安の中で生活は荒んで行く。
ラストではふたりの子供を妻の郷里に預け、夫婦は揃って精神科に
入院することになるのだが、問題は何ひとつ解決していない。
妻は次から次へと疑惑を持ち出し、夫は答えに窮したまま、ぽん、
と放り出されるように話は終わるのだ。
それは毎日詳細につけていた日記が突然中断されたような、着地点の
ない乾いた読後感だった。『棘』は抜かれないまま、書き手と妻、
そして読み手の心に残されている。

とはいえ妻がすっかり快復し、問題がすべて解決してめでたし、
などという陳腐で嘘くさい結びこそ有り得ない。ほぼ実話と知って
いればこそ、どうしようもない閉塞感と絶望があとを引くラストには
納得でき、不思議と救いのようなものをさえ感じた。

この後は当然『「死の棘」日記』を読むべきなのだろうが、小説の
内容のみならずそれを表現する文体も読んでいて窒息しそうな
苦しさだったので、より詳細に書かれているであろう日記を読む
気には当分なれそうもない。
それで次は女流作家でも読むかと、図書館で久坂葉子の本を借りてみた。
18歳で芥川賞候補となり、21歳で鉄道自殺を遂げた『元祖文学少女』
だという。随分とキャッチーな人もいたものだと思いつつプロフィールを
読んでみたら、島尾敏雄に会ったのをきっかけに作品発表を始めたと
書かれていて、作品を読む前からガックリ疲れて肩を落としたい
気分になった。
引っかかった『棘』はもうしばらく抜けそうにない。
スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://hal01.blog1.fc2.com/tb.php/137-719c3750

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

Appendix

プロフィール

ハル

  • Author:ハル
  • 横浜市在住。カメラはOLYMPUS派。

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。